【前代未聞のサル山侵入事件】着ぐるみの男らが侵入しサルたち怯える、リード・ジュナイ・デイソン容疑者ら2人を逮捕 人気のニホンザル「パンチくん」の安全巡り撮影全面禁止も議論 千葉・市川市動植物園

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千葉県市川市の市川市動植物園で、一匹のニホンザルが世界中から熱い視線を集めています。「パンチくん」です。

生後間もなく母親が育児を放棄し、“母親代わり”のオランウータンのぬいぐるみを離さない姿で話題となった彼も、来月には1歳の誕生日を迎えます。すくすくと成長し、今ではぬいぐるみを卒業して仲間のサルたちと過ごす時間が増えているといいます。しかし、その人気の高まりの裏で、サル山に男が侵入するという前代未聞の事件が発生しました。園内では「撮影全面禁止」すら議論される事態に発展しています。パンチくんの愛らしい現在の姿と、動物たちの安全を守るために葛藤する園の姿を追いました。

市川市動植物園のサル山の前には、エサやりの時間が近づくと、誰よりも早く扉の前に座って待つパンチくんの姿があります。扉が開いてエサを持った飼育員が出てくると、すぐさま飛びついて抱きつき、離れようとしません。さらに頭や首の辺りまでよじ登り、飼育員が持つ新しいバケツの中から直接エサを取ってしまうほどの成長ぶりを見せています。パンチくんは生後間もなく母親が育児を放棄してしまいました。その後、オランウータンのぬいぐるみを“母親代わり”にして片時も離さない姿が話題を呼びました。しかし現在では、そのぬいぐるみを卒業したのか、エサを配り歩く飼育員の一番近くでエサをもらい、たくましく育っています。今ではぬいぐるみの代わりに、サル山の仲間たちと過ごす時間が増えたということです。

パンチくんが移動するたび、来園者は必死にカメラを持った手を上に伸ばし、その様子を撮影しようと熱気を帯びています。来園者の中には、はるばる海外から足を運ぶ人も少なくありません。アメリカから来たという男性は、「最高です。オンラインで見た通りでした。信じられません。とても小さくて可愛いです」と興奮気味に語ります。このグローバルな人気の背景には、SNSでの拡散があります。ぬいぐるみと一緒に過ごす様子や、その後、仲間のサルたちに馴染もうと健気に頑張る姿が世界中に広まったのです。パンチくんの写真をSNSに投稿している男性によると、「世界中から『かわいい』とか、いろんな言語でコメントが入ってくる。フランス、イタリア、スペイン、トルコ、アゼルバイジャン、ロシアなど本当にたくさん」だといいます。さらに、海外メディアやアメリカ・ホワイトハウスの公式SNSにも登場するほどの社会現象となっています。

「パンチくんを近くで見たい」と願う人は多いですが、現在、それが非常に難しくなっています。その原因となったのが、先月17日に起きた事件です。周囲が騒然とする中、柵を乗り越えてサル山に飛び降りたのは、着ぐるみを着た男でした。自称・アメリカ国籍のリード・ジュナイ・デイソン容疑者です。映像には、デイソン容疑者がサル山に飛び降りた拍子に頭の被り物が外れ、慌てて被り直す様子などが記録されていました。思わぬ侵入者の接近に、サルたちは怯えた様子でサル山の上の方へと逃げていきました。デイソン容疑者は、その様子を撮影していたニール・ジャバリ・デュアン容疑者と共に、園の業務を妨害した容疑で逮捕されました。市川市動植物園の安永崇課長は、この事態について「前代未聞です」と強い口調で語ります。「猿山に人が入るということ自体初めてだと思いますし、我々もまさかそんなことをする人間が出てくるとは想像しておりませんでした」

事態を重く見た市川市と園は、パンチくんの人気が高まっているからこそ、追加の対策を講じることを余儀なくされました。もともと来園者の急増に伴い、園では柵から1メートル離れた場所に金属製のパイプを設置し、物理的に中に入れないようにしていました。しかし事件を受け、新たにそのパイプをさらに1メートル後ろに下げた上で、緑がかったネットを全面に張るという厳しい対策に踏み切りました。さらに、警備員の数を増やし、日本語だけでなく英語でも注意事項が書かれた紙を掲示するなど、パトロールと注意喚起の強化に追われています。安永課長は苦渋の表情を見せます。「このパイプとネットというこれ自体が、動物園にふさわしいかどうかというと、私自身もふさわくないと思います。ご来園の方が、サル山を非常に見づらくなった、撮影しづらくなったという声も聞きます」

実際、事件直後には撮影そのものを“全面禁止”にするかどうかの協議まで行われたといいます。園の公式SNSでも「協議ではサル山撮影の全面禁止も議論に。全面禁止の手法や生じる影響について、更なる検討を進めます」と発信されていました。安永課長はその背景について、「今回の事件は、世間の注目を集め、カメラのレンズがいっぱい向いているところを狙って犯行に及んだのではないかと言われています。我々としては、そういった事件を二度と起こさないために、撮影を全面禁止してはどうかという選択肢が上がったのも事実です」と明かします。一方で、来園者の中には園の判断に理解を示す人たちもいます。ある来園者は「悲しいですよね、見づらいので……。でも動物一番ですもんね。動物ファーストで。見えますし、楽しめるかなと思いました。撮りづらさはあるんですけど、見る分にはいいかな」と語りました。

来月には1歳の誕生日を迎えるパンチくん。日曜日には、園がSNSに最新の動画を投稿しました。そこには、サル山に設置されている鎖の上を器用に渡り、仲間のサルと遊ぶ元気な姿が収められています。園の公式SNS担当者は「パンチは、特に夕暮れ時は観察するのもひと苦労なほどよく動き回ってます。そうなると当然…ごはんモリモリモリモ」と、その活発な様子を伝えています。園は、そんなパンチくんの姿を一人でも多くの人に見てもらいたいと願っています。安永課長は「どうやったら世界の皆さんをがっかりさせないことができるか。そういったところを十分考えていかないと、なかなか撮影全面禁止という選択肢は難しいのではないか」と語り、ファンへの思いと安全対策の間で揺れる胸中をのぞかせました。「パンチが話題になって以降、たくさんの方にご来園いただいて、多くの皆さんに笑顔で公開いただくことができました。我々としては本当に嬉しく思っています。皆さんの笑顔をですね、これからも、どんどん作り続けていきたい」と語る安永課長。パンチくんの健やかな成長を見守りながら、安全に、そして多くの人に楽しんでもらうため、市川市動植物園の模索はこれからも続いていきます。