佐賀県警の科学捜査研究所(科捜研)元職員がDNA型鑑定で不正を繰り返した問題で、警察庁は4日、県警への特別監察の結果を公表しました。県警の当初の調査結果から、新たに110件の鑑定を不適切と認定し、不正は計239件になりました。
元職員が担当した643件の鑑定の約4割に上り、警察庁は4日、県警の福田英之本部長を業務指導処分とし、全国の警察に再発防止策を通達しました。警察庁は元職員が2013年5月以降に一人で担当した全ての鑑定を点検し、別人の拘束や公判への影響はなかったと確認しました。
一方で、試料が保管されておらず再鑑定できないなどの理由で、本来なら容疑者を特定できた可能性があったか「影響が不明」なものも37件あったとしました。県警は昨年9月、元職員が17年6月~24年10月、必要な検査をせずに「DNA型は検出されなかった」と報告するなど、130件の不適切な鑑定に関与したとして、懲戒免職にしていました。
警察庁は、昨年10月に県警への特別監察を開始。外部有識者の意見も聞きながら、科学警察研究所(科警研)の幹部ら35人体制で、「捜査・公判への影響の有無」と「鑑定の実施状況」の確認を進めてきました。その結果、元職員が16年8月から不適切な鑑定を繰り返しており、110件の不正が見落とされていたことが判明。問題のある鑑定は計239件に膨らみました。
件数の増加について、同庁は「県警の調査とは体制やメンバーの専門知識が異なるため」などとしています。不適切な処理の例としては、鑑定結果に添えるデータの不正利用や作業工程表・検査日の改ざんなどが目立ちました。「DNA型は検出されないだろう」という自らの予想に合う決裁資料にするほか、不十分な検査結果を隠す目的などがあったと考え方られるということです。
一方、県警が「不適切」とした事案のうち1件は適切と判断されました。報告書では、不正の背景も分析しました。元職員の倫理観の欠如に加え、鑑定の増加で負担が増した現場の支援体制の問題や、チェック体制の不足などを挙げました。同庁は再発防止に向け、全国の科捜研への監査を強化し、外部有識者に「DNA型鑑定アドバイザー(仮称)」を委嘱するなどして、都道府県警の鑑定の適正さを確保する構えです。
警察庁の楠芳伸長官は4日の定例記者会見で、「DNA型鑑定は客観証拠に基づく緻密かつ適正な捜査の重要な柱」とした上で、「二度とこのような事案を発生させてはならない。再発防止策を確実に実施し、国民の信頼回復に努めたい」と話しました。佐賀県警の福田英之本部長は4日、県警本部で記者会見し、「一連の行為は科学捜査、県警、警察活動への信頼を大きく損なうものであり、県警の責任者としておわび申し上げる」と陳謝しました。
県警の調査で判明しなかった不正が明らかになったことについては、「当時の調査に不十分な点が認められ、大変重く受け止める」と述べました。県警は4日、科捜研の前所長ら幹部3人について、本部長による口頭厳重注意や業務指導の処分としました。


